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​作るひと 
吉井牧場(シリカファーム)吉井由香さん
 

●お名前をお伺いしてよろしいですか

 吉井由⾹です。

●年齢は・・・?

 35です、今年36になります。

●この仕事を始めたきっかけはなんですか?

 昔から両親が酪農をしてて、私が中学の時に⽗がシリカファームを始めたんですけど、その時点ではやるつもりはなかったんですね。酪農も⼯場も。なかったんですけど、私が⾼校の時に⽗が⼊院したことがあって、その時にこのまま跡取りが誰もいないって⾔うのは、なんか・・・なんかこのまま終わらせちゃいけないと思ったんですね、その時に。なので、⾃分がしようかなと思ったんです。⽗が⼊院して、⺟が⼀⼈で、まあ祖⽗も⼿伝ってたんですけど・・・そういうの⾒ててなんか⼒にならなきゃいけないかなって思って、だったらもう跡を継ごうと思ったのがきっかけですね。それが、⾼校1年の時です。なので⾼校卒業して進路どうするかってなった時に、もう酪農の道に⾏こうかなと思って北海道の短⼤に⾏って、で帰ってきてからずっとここで働いています。

●普通の酪農と吉井さんのところの違いを教えてもらっていいですか?

 1番の違いは、シリカを使っているということですね。シリカっていうのは天然の鉱物で、匂いを消してくれるという効果があるので牧場の⽜の堆肥とかの匂いを軽減してくれて、だから牧場全体が匂いがしない。

●吉井さんの牧場全然臭くないもんね、ほんと。

 そうです、だから⽜乳も⽜乳臭さもなくてとても飲みやすい⽜乳ができるっていうのが他の酪農家さんとの違いですね。

●お⽗さんが、もともと普通の酪農からシリカに切り替えたきっかけはなんだったんですか?

 もともと、うちの祖⽗の代から酪農を始めたんですけど、20頭くらいで、⽜を1頭1頭繋いで、⽜はずっとじっとしたまんまの繋ぎ⽜舎っていうやり⽅だったんですね。でも⽗はそのやり⽅じゃなくて「フリーストール」って⾔って⽜が⾃由に動けるような⽜舎を作りたかったと。なので、今⾒ていただいたあそこの牧場に新しく建てて⽜が歩けるようにって⾔って。で、頭数も80頭まで増えたし、そうなると堆肥の問題が出てくるんですよね。⽜が増えると。

●うん、いっぱい出てくるしね。

 そう、でその堆肥が臭いと周りの住⺠の⽅達にあまり良い顔をされない。で、それをどうにかしたいって事で、⾊々と勉強会などに出ててそこでシリカと出会って。

 静岡の実際シリカを使っている牧場を⾒に⾏ったら、シリカ使うと本当に匂いがしなかったと。じゃあこのやり⽅を教えてくれってその場でやり⽅を教えてもらって、で実際やってみたらほんとに匂いがなくなって。

●じゃあ頭数を増やして「フリーストール」にしたことがきっかけで。

 そうですそうです。頭数を増やした分堆肥の問題、匂いの問題どうしようってなってそれでシリカと出会ったと。そういうところですね。

●吉井牧場の⽜乳とかアイスって本当にすごい美味しいですよね?あれってシリカ以外に何か理由があるんですか?

 酪農の段階では・・・そこまでないと思います。⽣乳の味の違いは、シリカに尽きると思います。で、それをこっちの⼯場(シリカファーム泗⽔)に持ってきて、低温殺菌、ノンホモっていう⾃然に近いままの状態を残すことによって美味しい、その、市販の⽜乳とは違う⽜乳ができてるかなと思います。

●酪農で苦労することは?

 酪農で苦労することですか・・・?苦労することは・・・そうですね。うーん、⼀般的には休みがなくて⼤変だねっていう話はよくされるんですけど、休みがないことに関しては苦労とは全然思わなくて、もうそれが普通だからですね。苦労は・・・⽜の体調とか⽜の状態を管理するところですかね。でも私はそこはあまりノータッチなんですね、搾乳はしますけど、あとは⼯場のほうにいることが多いので。あとは、従業員さんとか両親が気をつけながら⾒てるんですけど。どうしても、乳⽜は⼈と違って喋らないので、こっちでよく観察して気づいてあげる。早めに気づいてあげて処置してあげないともうみるみる悪くなったりするのでそういうとこは⼤変かなって思いますね。

●工場で商品を作る時に苦労することは?

 何が⼀番⼤変ですかね・・・すごく基本的なことですけど、低温殺菌、ノンホモってすごくデリケートなものなのでいつも通りやっているつもりでも、ほんのちょっとの差で「今⽇の⽜乳違うな」って産直クラブの会員さんとかおっしゃる⽅がいらっしゃるんですよ。

 

●ほんと?すごいね・・・

 

 いらっしゃいます。⻑年飲んでくださっている⽅はやっぱり気づかれるんですよね。で、こっちもえ?ってなって、でも振り返ると、あ、あそこの⼯程が少しいけなかったね、みたいなのがわかったり、気づかせてもらったりするんですよね。

 

●やっぱあるんですね、そういうの。

 ありますあります。だからその毎⽇の同じ作業なんですけど、確実にやるっていることの⼤切さは毎回思います。⾃分⼀⼈でやっているなら、気をつけるだけで済みますけど、どうしても他のスタッフに任せる部分ってあるじゃないですか。で、やってくれてすごい助かる。でもその・・・⼀⼈⼀⼈にまで徹底して同じことをやってもらうのはこっち側がしっかりしないといけないかなっていうところはあるので、そこら辺が難しいところですよね。

 

●20歳からずっと続けてきて、やめようと思ったことはないですか?

 ないです。全然。酪農の道辞めるって考えたことはないです。ここでどれだけ新しいことができるかだと思ってますので。

 

●吉井牧場は前からあるじゃないですか、シリカファームはいつ頃から?

 2000年ですね、もう20年前。

●会員さんで新しく始めた方はもしかしたら、低温殺菌とかノンホモってよくわからない⽅もいらっしゃるかもしれないのでその説明をしてもらっても良いですか?

 今結構、こだわりの牧場さんの⽜乳とかが出回るようになってノンホモ、低温殺菌って聞かれるようになったと思うんですけど、20年前、⽗が始めた時は酪農家が⾃ら⽜乳を作るっていうのはほとんど無くて、⼤⼿の乳業メーカーに⽣乳を卸すのが⼀般的で。⼤⼿の製造⽅法っていうのが、120度以上の超⾼温で2秒とかで⼀気に殺菌処理するやり⽅です。⼤量⽣産には向いていて。でそれとは真逆63℃30分ていう低温殺菌をウチはやっていて、その⽅が⾃然に近い⽜乳なんですね、無駄な菌を殺さない、有害な菌だけを殺して有⽤な菌を残すっていうやり⽅です。で、脂肪球をくだかない⽅法がノンホモって⾔って、脂肪球を砕かないことによってほんとに⾃然に近い⽜乳のままですね。⼤⼿さんはノンホモでやると⼤量⽣産に向かないのでその⽅法は取れない。そういう違いですね、⼤量⽣産か少量⽣産か

の違いで。でもうちの⽅が、体に良い⽜乳だとは思います。

●今後の展望はありますか?

 産直さんのような宅配関係の分野はコロナのおかげと⾔っていいのか、今回需要が⾼まったと思うんですね。なので、せっかく昔から取引させていただいている産直さんともっと関係を深めるというか、より会員さんにうちの商品を知ってもらって伸ばしていきたいなとは思ってます。だから、昔からうちの商品を飲んでくださっている会員さんにはこれから先もずっと飲んでいただきたいですし、こういう商品があると良いなとかご意⾒があればぜひ伺いたいなと思ってたんですね。また、新しく会員さんになられた⽅はもしかしたら⽜乳ってどれ飲んでもおなじでしょって・・どうしても⽜乳って、味の違いが歴然と出るって⾃分では思ってるんですけど、⼀般的にはどれ飲んでも⽜乳でしょって思われてる⽅も多いと思うので、うちの良さというか違いというか、そういうところを感じていただきたいですね。福岡と熊本なので距離も近いし、これからもっと福岡に出向いて営業とかしたいなと思ってます。お店の前でお客様と直接話したり、産直の会員さんと触れ合ったり。⻑丘店もマリナ店も新しくなるし、こっちも商品のこときちんと説明して、いろいろなお客様の意⾒を聞いてみたいですね。

 

●産直クラブに意⾒や要望は?

 送料安くして欲しいです・・・笑 まあしょうがないことではあるんですけど・・・やっぱり福岡と熊本の距離だと送料が結構かかるので。でも結局は、取引の量が増えれば触れるほど、安くなるんですよね・・・だからそこら辺も含めて産直さんとの取引をもっと増やさないとですね!笑

 

●会員さんにメッセージは?

 いや、ほんとありがとうの⾔葉しかないです。本当にうちを選んでいただいてありがとうございます。それを本当に伝えたいです。⽜乳ってどうしても優先順位的には低いところに来ると思うんですよね、⾁とか野菜とかお⽶に重きを置きたい。家計的にもどうしても。それでもうちの⽜乳を、そんなに安くはない値段だと思うんですけど、それでもうちを選んで頂いて本当にありがたいなと思っています。あとはそのうち準備ができれば、うちは⽜乳⼯場と牧場も歩いて1分くらいの距離なので、会員さんに牧場⾒に来てもらったり、⼯場でミルクジャム作るワークショップができたらいいですよね、⼦供さんとか。

 いいですよね!僕たちは何度も牧場に来てるからわかってるけど、いくら記事で「吉井牧場は臭くない」って書いても、

 「そんな・・・またまた・・・」みたいなね笑

 なかなか伝わらないと思うので、ぜひ体験して欲しいですよね。実感すると、すごいってなりますもんね。

 ありがとうございました。

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​食べるひと 
産直会員様電話インタビュー 匿名

●お年はお伺いできますか?

 まあ、それじゃ70代とだけ笑

●現在ご同居されているご家族は?

 主⼈と2⼈です。

●産直クラブを始めたきっかけはなんでしたか?

 50年ほど福岡を離れて東京で暮らしていました。向こうでは、たくさんお店もあったのでなんとかなったんですけど、こちらに帰ってきてから、オーガニックのお店を探しておりまして、たまたま⻑丘のお店を⾒つけましたの。それでしばらくお店に通っていたのですけ

ど、ある⽇ポストに宅配のチラシが⼊っておりました。これから歳も取ってくるし、これはいいなと思って始めました。それで2年ほど利⽤しております。

●ありがとうございます。普段の⾷⽣活で気を遣っていることはありますか?

 やはり農薬や添加物の無いものを選ぶようにはしています。若い頃のことですが、「世界の薬膳料理」教室で習った料理などで、ホームパーティーをしますと、結構⼈気がありました。でも、あるとき気が付いたんです。そのきっかけは友⼈から頂いた⾃家栽培のお野菜。その美味しさに驚きました。畑にこだわり続けたご苦労の賜物!畑の恵み!これがまさに薬膳なんだなって。あとは予防医学ですね。できるだけお医者さんを頼らないために、毎⾷事には気をつけて塩分や糖分、コレステロールを控える、やはり⾷べ物が⼀番⼤事でございましょ。

●⾷事のことに気を使うようになったきっかけは何かありますか?

 うーん、やはり⼩さな頃からの⽣活習慣だったと思います。私の⽗は医者でございましたが、最晩年までほとんど病気とは縁がなく過ごしまして、94歳で亡くなりました。他に贅沢はあまりしないのですが、両親ともに⾷材に関しては本当に吟味しておりました。⽗は内科医でしたので、いろいろな病気の患者さんを診察するわけですけど、いつも「⼩さい時から⾷事に気を使う習慣がないと、病気になってから気にし始めても限界がある」と申しておりました。そういえば、先⽇書棚で⾒つけたのですが、『健康はあなたが作るもの』と題した⽗の⽂章が昭和45年7⽉号夫⼈雑誌『ミセス』に掲載されていました。コロナ禍での健康意識の強まった今、改めて読み直しても興味深いものがありました。「健康の規定としているものは精神と⾁体と環境で、その中で⾁体の健康としては、⽣体は神経と⾎⾏でコントロールされているので、機能良くするためには神経の働きを良くし、⾎⾏をスムーズにすることが最も⼤切」、またストレス軽減の⽅策として、ストレス学説のセリエという⼈が述べた「感謝の理念」について書かれていました。まさに作る⼈、運ぶ⼈、⾷べる⼈に感謝することは、各⾃の健康に繋がる⼤事なことのようです。

●産直クラブのどんなところが好きですか?

 もともとお店の商品が気に⼊って使っておりましたので、良いということはわかっていました。産直クラブは、配達のスタッフの福本さんも誠実な⽅ですし、事務所で問い合わせに対応してくださる⽅もとてもしっかり応対してくださるので⾮常に好感を持っています。

 

●ありがとうございます。スタッフが聞いたら喜ぶと思います。

 産直クラブが新聞を発⾏するときいてとても良いことだなと思いましたのよ。他の会員の⽅がどんな商品を気に⼊って使っていらっしゃるのか、どんな背景で作っていらっしゃるのか、そして産直クラブの⽅がどんな⼈なのかもっと知ることができたら嬉しいですよね。やはり、利⽤者の意識を⾼めていくのはとても⼤切なことですよ。消費者と⽣産者と産直クラブの⽅と、やはりコミュニティーですから、3者が⼀体になってやれればね。会員さんはお若い⽅も多いと聞いています。⼦育てにしても⼤⼈の健康にしても、普段の⾷事がとても⼤切だと思っているので、このような新聞があることで皆さんが産直クラブの背景を知ってくださればもっと意識が⾼まっていくと思います。

●嬉しいです。まさにそういう思いで新聞を始めました。

 以前お正⽉に購⼊した商品の中に1点腐敗していたものがありまして、それですぐ写真を撮りまして、産直クラブの⽅に連絡をしました。そうしましたところ、企画部の⾼⼭さんと⾔う⽅がすぐに対応してくださって、⽣産者の製造の経緯などの報告書をすぐに送ってくださいました。その対応の素早さと丁寧さは⾮常に好ましかったです。消費者も⽣産者も産直クラブもお互いに尊重している態度って⾔うのですか、それが感じられて⾮常に好感が持てました。

●その節は本当にご迷惑をおかけいたしました。今後そのようなことがないよう気をつけます。ありがとうございます。産直クラブに対するご意⾒はありますか?

 そうですね、私産直クラブが初めての宅配なのですけど、注⽂書を毎週提出していますでしょ。そうすると注⽂書のコピーが⼿元にないので困りましたね。翌週配達ならまだしも、翌々週の配達だともう覚えてられない笑 それで、初めは⾃分でメモをとっていましたの、でもそれも⼤変でしょ。なので今は写真を撮るようにしています。注⽂書の。ですから、注⽂書のコピーが⼿元に残るようなシステムがあれば嬉しいですね。だけど、会員さんの数も多いと思いますし、なかなか難しいのかしら?あとは、⽣産地を訪ねるツアーなどがあれば楽しいでしょうね。家で飲むのは、今まで海外のワインばかりだったのですが、産直クラブで国産のワインの良さを知りました。何より酸化防⽌剤が⼊っていないのが以前からの魅⼒ではあったのですが・・・こんなに⽇本のワインもおいしくなっているんですね。例えば、そういうワイナリーツアーなど⾒学に⾏けたりすると嬉しいですよね。

●ありがとうございます。そのような企画がもっとできるよう頑張ります。

 あとは私、カタログの気に⼊った商品は、種類別にして切り抜いてファイルしているんです。⾃分なりに5段階で評価して。あとは、贈答品としてお友達に送ったときに喜んでもらえたものなども、⽇付を⼊れて。

●すごいですね!とても参考になると思います。今⽇はありがとうございました。

 こちらこそありがとうございました。ごめんください。

​いとバイ通信 
元熊本産直クラブ代表 伊東弘
 

 ウグイスがやっと⼀⼈前の鳴き声に近づいてきました。

 

 農薬の歴史を振り返ります。

 

1 828年に有機化合物である「尿素」が初めて合成されます。それまでは有機体は⽣物しか作ることができないと信じられていました。尿素の合成で⼈類は⼈⼯的にいろいろな物質をつくり出すことができるとわかりました。学者たちは新しい物質を合成することに夢中になり、その中に農薬として使われるようになった物質がありました。

 

 1800年代の中頃フランスには⾃然⾷品店ができました。この店は全国に百を超えるチェーン店となり今⽇に⾄っています。化学物質の合成に湧く頃、同時期にその危険性を予知していた⼈たちがいたことは驚きです。

 

 1914年〜18年の第⼀次世界⼤戦で化学兵器が使われました。⾵向きが敵陣に向かっている時に塩素ガスなどを⾵に乗せて攻撃するというものです。戦争が終了しても塩素ガスの⽣産は落ちませんでした。それは化学兵器であったものを平和利⽤と⾔い換え「農薬」として使うようになったからです。

 

 第⼆次世界⼤戦では化学戦が⼀層進み、⼈間を殺すための化学物質を⾒つけるために昆⾍が実験台として使われました。そして戦争が終わると昆⾍での実験成果が農薬として⽣かされ、世界中で農薬が使われるようになりました。

 

 「農薬」は戦争中は⼈間を殺すための化学兵器として開発されたので農薬が⼈間に無害なはずはありません。

 

 ⽶国の⽣物ジャーナリストであるレイチェル・カーソン⼥史が⾃然破壊を警告する「沈黙の春」を1962年に発表。この本は世界で使われている農薬の安全性に焦点をあてられました。彼⼥⾃⾝の⾒解のほか当時の最⾼⽔準の専⾨家の意⾒も掲載されています。この本は世界中で発⽣していた農薬問題の取り組みに⼤きな影響を与えました。

 

 ⽇本では20世紀中頃、⾼度経済成⻑の最中に4⼤公害病が起こりました。作家の有吉佐和⼦は1974〜75年に「複合汚染」を発表。この本は多⽅⾯から環境問題を取材し⼈間は複合的な環境汚染にさらされていることを指摘しました。

 

 私は⽣産者のことを伝えるため産直クラブの⽣産者を取材してきました。⽣産者が⾃然派の農産物を作るようになった「きっかけ」を聞いてみると「沈黙の春」と「複合汚染」を読んだことだと複数の⽣産者が答えています。この2冊は環境問題の古典のような本です。でもその魅⼒はいまだ失われていません。

​コミューン時評 
ドリームグループ代表 吉田登志夫
 

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3.11から10年。何を忘れてはいけないのか。

 

 我が家には甲斐⽝ミックスの"陸"がいる。陸は2011年3.1東⽇本⼤震災が起きた年の12⽉、メルトダウンで爆発した福島第⼀原発⽴地点の⼤熊町中⼼部信号付近でNPOボランティアさんに保護された。推定1歳、おそらく原発事故の時は⺟⽝の胎内にいて、その後⽣まれ、⽣き延びたのだろう。当時の被災保護⽝をネットで検索すると陸とほぼ同じ紋様の⼀緒に⽣まれた姉妹兄弟⽝らしい甲斐⽝が2頭出てくる。陸は保護された後神奈川、京都のシェルターを転々とし、3年前に朝倉のJタッズアニマルシェルターに移ってから僕の元に来てくれた。過去3度ほどお試しで⾥親さんに引き取られたが、⼦どもに懐かないということで戻ってきたらしいが僕とはとても相性がいい。

 

 復興庁によると東⽇本⼤震災での死者は20年2⽉時点で、⾏⽅不明者・「関連死」含め2万2200⼈、避難⽣活者は4万8000⼈。避難⽣活者の多くは福島の⽅々で、福島県によると約4万⼈が現在も避難⽣活を余儀なくされており、うち約3万⼈が県外で暮らす。どうして福島の避難⽣活者が圧倒的に多いのかというと、その原因は原発事故での放射能汚染事実とその不安である。

 

3 .11が来ると政府やマスコミは「3.11を⾵化させるな」と⾔う。何を⾵化させてはいけないのか?それは「原発廃⽌への決意」であるはずだ。当時は⾃⺠党をはじめ全ての政党はこぞって原発廃⽌を決意し、政策として競って発表した。しかし、今はどうか?ほとんどの政党はコッソリと政策を転換し、原発再稼働に舵を切った。⽬先の経済と企業優先の為である。原発には事故の恐怖もあるが、廃炉・核燃料処理に300年単位の膨⼤な時間と費⽤がかかる。NHK調べでは福島第⼀原発の廃炉には8兆円、全国各地の60基原発(9稼働中)や原⼦⼒関連施設の廃⽌にかかる費⽤の総額は少なくとも6兆7205億円に上るという。これは未来の⼈たちが払わされる。原発稼働はまだ⾒ぬ⼦どもたちへの負債被せという詐欺⾏為に近いものでもある。翻ってヨーロッパでは各国で脱原発が進んでいる。メルケル⾸相率いるドイツでも福島原発事故を受けて、2011年、国内に17基あった原発を段階的に廃⽌する脱原発の⽅針を決め、いずれも来年までに停⽌される予定だ。原発の代わりに⾵⼒や太陽光などの再⽣可能エネルギーを推進しており、去年、再⽣可能エ

ネルギーが総発電量に占める割合は50%を超えた。「喉元過ぎれば、熱さ忘れる」―なんという⽇本の政治(家)の劣化か!福島では多くの⼈々が被災したが、⽝や猫や⽜も豚も⿃やイノシシたちも被災した。Jタッズアニマルシェルターで保護した⽝1200頭の内晴れて飼い主の元に帰れたのは189頭。多くは⾥親に引き取られ、現在では8頭の福島被災⽝が残り、朝倉のシェルターで暮らしている。

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